「とは言ったものの・・・なぁ・・・」

半ばため息混じりに家路につくアスマ。
折角美味い酒を飲んでいたのに一気に不味くなってしまった。
その理由はいわずもがな・・・ナルトの持ち込んできた無理難題。
そしてそのナルトが帰った後でも執拗な紅の質問攻めが降り続いて、酒を飲むどころではなくなってしまった。
アスマは紅から逃げるように『人生色々』を後にした。
そして、今に至るわけである。

「さて・・・どうしたものか・・・」

重くのしかかる問題に頭を抱えるアスマだった。





IN THE LIFE  ナルトの巻物奪還作戦2(他力本願)



「ちくしょ〜メンドクサイ事になったもんだ・・・・ん?」

すっかり日が暮れてしまった帰り道をとぼとぼと情けない姿で帰るアスマの前方に見慣れた後姿の人物が歩いていた。
アスマはその知っている人物に駆け寄り話しかけた。

「よぉ!ハヤテじゃねぇか!」
「・・・・ゴホ・・・アスマではありませんか・・・どうされたのです?こんな時間に」
「さっきまでよ、酒飲んでたんだがな・・・ちょっとうずまきがメンドーな話持ち込んできやがってよ」
「ほう・・・」

アスマはハヤテに今までの経緯をハヤテに全て話した。
ナルトの家が火事になったこと、カカシの家に厄介になっていること、そしてアノ巻物がカカシによって没収されたことなどなど・・・。

「ほう・・・私があげたあの巻物をナルト君にあげたんですね・・・」
「あ・・・まぁな・・・」
「あれは確かアスマの知り合いのくノ一に渡すとかなんとかいってませんでしたかねぇ・・・・・ゴホ・・・」
「う・・・・」

アスマはハヤテに書き写してもらった淫術の巻物をナルトにあげることを隠していたのだった。
痛いところを付かれたアスマは言葉に詰まる。
ハヤテは里の薬剤師の顔を持つ反面、巻物の管理も手がけていた。
アカデミーでの習う術の上限なども決めているのはハヤテが所属する火影直下の執務室だった。
その他にもハヤテはそれぞれの忍のレベルに合わせた任務の振り分けなどもやっていた。
ハヤテの所属する執務室は非常に激務な所なので、責任感のあるしっかりしたハヤテだからこそ勤まる仕事なのである。
其処にアスマが目をつけないわけがない。

言葉に詰まったアスマだったが、それとなくハヤテの言葉をかわそうとする。

「まぁいいじゃねぇかよ。巻物渡す人間が変わってもよ」

しかし、流してくれないのがハヤテ。

「・・・・よくないんですね。あれはくノ一だけに許される術ですよ。アスマもその辺のことは分かっていたはずです」
「へいへい・・・わかりやしたよ・・・ハヤテ先生。」

愛想のない返事のハヤテからは、上手い知恵など借りれるわけなどないと高をくくったアスマは
あらぬ方向を見ながらハヤテが放つ厭味をしれっとかわした。
そして、アスマがその場から立ち去ろうとしたその時、あのハヤテの口から出てくるとは思えないような台詞が帰ってきてアスマは目を丸くする。

「そんじゃオレそろそろ帰・・・」
「しかし・・・面白そうですね。その展開は」
「は・・・?」

アスマは自分の耳で聴いた言葉が信じられずに思わず間抜けな声でハヤテに聞き返した。
その本人、ハヤテは顎に手を当て腕を組み、少々俯き加減で無表情の中にも、明らかに悪巧みを考えている表情を浮かべていた。
妙なハヤテの雰囲気にたじろぐアスマだった。
そんなアスマの事など全く気にするわけでもなく、ハヤテは一人勝手に再び話始める。

「ナルト君に淫術ですか・・・アスマ貴方にしてはなかなか気の利いた事をしましたね」
「え・・・?」

アスマはハヤテから益々醸し出されていく邪なチャクラを感じ取りさらにたじろいだ。
その表情はあくまでも無表情。
しかし、無表情で言葉少な目のハヤテの態度とは裏腹に、その邪なチャクラはハヤテの現在の心情を饒舌に語っていた。
嫌と言うほどに。
アスマはこの時点で分かってしまった。
『コ・・・コイツもうずまき狙いだったのかぁ〜っっ!』
・・・・と。

そう、今の木の葉の里ではナルトの人気は赤丸急上昇中。
あの、誰もを引き寄せる明るい笑顔に、少し成長の送れた華奢な身体、風貌。
実際、今のナルトを影で狙っている輩は多かったのだった。
その、ナルトに向けられる邪な視線やチャクラを感じ取っていたカカシは片っ端から脅しに近い警告をかけ
ナルトをその魔の手から、守り続けていたのだった。
ナルトは当然そんなことなど知る由もない。
今現在でもナルト自身、『自分は里の厄介者』だと思い込み続けている。
もし、自分の事を少しでも認められたと思い出したのなら、ナルトは自分からその者達の所に行ってしまう恐れがある。
カカシはそれを恐れ、自分から離れていかないように少々ズルイと思いながらもナルトにはその事を告げないでいたのだった。
人を魅了する不思議な雰囲気を持つ少年。
その、魅力に一番最初にやられたのはカカシ自身だったのかもしれない。
日に日にナルトに向ける視線が熱いものに変わって行っているカカシの様子にアスマが気付かないワケがない。
しかるにアスマは、今回の淫術巻物押し付け作戦に出たわけである。
しかし、そのアスマにもこのカカシの心情は読めてもハヤテの心情までは読めなかったようである。

「しょうがないですね・・・この私が策を与えましょう・・・ゴホ」
「は・・・はい・・・お願いします・・・(汗)」

アスマはハヤテのチャクラに押され、思わず敬語で返事を返していた。
デカイ図体の男がなんとも情けない様子になってしまっている。

「いいですか?アスマ。明日の夕方『人生色々』で宴会をやりましょう」
「はぁ・・・?いきなり何言い出すかと思えば・・・なして宴会?」

アスマは突拍子もないハヤテの申し出に、再び声を裏返して聞き返した。
ハヤテ・・・この男は何を考えているやらさっぱり分からないアスマであった。
顔全体に「?マーク」が飛び交っているアスマの様子など微塵にも気にせずに再び作戦の内容を話し始めるハヤテ。

「まぁ聞いてください。できるだけ怪しまれないようにカカシに関係のある上忍全てに声を掛けてください。その方達誘う時の文句は
慰労会だと言えば怪しまれることはないでしょう」
「はぁ・・・」

未だに何のことかさっぱり分からない様子でアスマはハヤテの話に相槌をうつ。
その顔には「?マーク」が飛び交い続けていた。

「その酒の席で、私がカカシに一服盛りましょう」
「はぁ・・?カカシにかぁ?アイツ対外の薬には免疫もってるぞ。無理なんじゃねぇか?」
「それは大丈夫です。最近私が新しく開発した新薬がありましてね」
「なんの・・・?」
「火影様の命令で作った薬なんですが、足腰の感覚を奪ってしまう麻酔薬の一種です」
「へぇ・・・こいつぁ・・どうも」

アスマはハヤテの話の先を読み、ニヤリとあくどい笑みを浮かべた。
そんなアスマの様子を気にする事無く、ハヤテは話を先に進める。

「通常、煙玉なんかに粉末の状態にして相手に吸わせるのが目的なんですが、飲用しても害はありませんからね。これを
酒に混ぜてしまえば、酒に強いカカシでも相当悪酔いする筈なんですね」
「酩酊している隙にってことだな?」
「その通りです。これであればナルト君であろうとも、アカデミー入学前の幼児でも容易に巻物を手にすることはできる筈なんですね」
「それ・・・いいずぎじゃねぇ?」

幾ら薬の効き目を上手く説明したいからといって、ナルトと幼児を同じレベルにするのはちょっとナルトが気の毒だと
思うアスマだった。
しかし、鬼(アスマ)が金棒(ハヤテ&薬)を手にした今、ナルトには申し訳ないがそんな事は一瞬で空の彼方に飛んでいってしまっていたアスマだった。
名案を手にしたとばかりに、アスマは両手を高々と掲げ『ぃよっしゃぁ!』と雄叫びをあげたのだった。

「これでカカシも年貢の納め時だな」

押さえきれない笑いが湧き上がってくるアスマだったが、ハヤテは相変わらず無表情だった。








翌日・・・・
アスマは10班の任務を早々切り上げ、シカマル達を解散させカカシ達7班が行っている任務先へと
向かっていた。
本日の7班の任務は里外れの農家での農作業だった。

「ったくもぉ!手ぇドロドロじゃない〜!!カカシ先生も手伝ってよ!!」

手首で汗を拭いながら不満そうに文句を言うサクラの姿があった。
サクラの文句は広大な田園に虚しく木霊するだけだった。
相変わらずマイペースなカカシは、そんなサクラの文句も軽く受け流してしまう。

「ん〜今忙しいから後でネ」

あからさまに大嘘だとわかる言い訳にサクラの怒りは益々増大していく。
ナルトも巻物を返してくれない恨みもあってか、サクラに便乗して文句を言い始める。

「何言ってるんだってば!!本読んでるだけで何も忙しそうじゃないってば!!こんなの一日じゃ終わらないってばよ!!」
「そうよそうよ!!木の葉一の忍者が聞いて呆れるわよっ!!カカシ先生のバカ!アホ!エロオヤジっ!」
「・・はいはい。って酷い言われようネェ」

しょうがないと、読んでいた本をぱたんと閉じて、カカシは重い腰を上げて立ち上がった。

「まぁ、そこ終わったら終わりにしよう。里に戻って飯奢ってやるからがんばれって。デザート食い放題頼んでもいいぞー」

カカシの一言でコロっと態度を一変するサクラだった。
サスケは相変わらず無言で作業をこなしている。

「え?vホント?カカシ先生イイ男!」
「サクラちゃん、現金だってば・・・・」

呆れた視線でサクラを見るナルトだった。
サクラに視線を送る向こう側、滅多に人が通らない農道に人影が見えた。
その人影は見慣れた人間のものだった。

「あれってばアスマせんせーだってば?サクラちゃん」
「あーほんとー・・・何しに来たんだろ?」

人影の主、アスマはカカシのいる場所まで近寄って行き、何やら話始めている。
アスマの話を聞いてあまり乗り気ではないような様子のカカシの姿が二人の目に入ってくる。
疑問に思うナルトとサクラだった。

「何話してるのかしら?アスマ先生」
「わかんないってばよ」
「ま・・いいじゃない。どうぜあたし達にはカンケー無いだろーしさ。さっさとやっちゃお?ナルト」
「そうだってばね。後でデザートとゴハン待ってるってばよ!」

ニコニコとこの後のお楽しみを胸に作業に取り掛かろうとした二人へ一気にやる気をなくさせるような言葉が
サスケから飛び出してくる。

「どうやら、今日の飯奢り無理みたいだな」
「「え゛っ!!」」

サスケの言い放った言葉に過剰な反応を見せるナルトとサクラだった。

「そ・それどういうことだってば!サスケ!!」
「10班のあの担当教師、今日はカカシ含めて各担当教師集めて慰労会するみたいだぞ」

「「はぁっ!?」」

サスケはアスマとカカシの話を聞き耳を立てて聞いていたのだった。あくまでも冷静に事の次第を作業の手を休めることなく二人に説明する。
それを聞いたサクラは恨みの念をこめた視線でカカシを睨み、ナルトはサスケの胸座をつかみかかっていく。

「どーしてだってばっっ!デザート頼み放題のメシ奢るって約束したってばよっっ!」
「オレに怒るな!!言い出したのはカカシだろーがっっ!!!離せこのウスラトンカチバカザルっっ!!!!」
「うきーっっ!!!!!!(怒)」


一方木陰の下でのアスマとカカシは・・・。

「おい、あの二人いつもアノ調子なのか?」
「ん〜・・・まぁね。今日は仲いい方だよ?」
「あっそ。苦労絶えねぇなぁ・・・って一人女の子が物凄い形相でこっち睨んでるぞ・・・(汗)」

アスマは異様な威圧感をかもし出す視線とチャクラを感じ、その大元の方向を見る。
その視線の先には、物凄い恨みの念を込めた形相で睨むサクラの姿があった。
最近異様なチャクラばかりを身に受けるなとがっくりくるアスマだった。
そんな、部下の異様な視線を受けながらも、カカシは眉一つ動かさず、普段の表情のままだった。

「ん〜・・・聞こえちゃったかなぁ?今の慰労会の話」
「なんで?教師は酒呑みに行っちゃいけねぇのかよ?」
「違う違う。今日ね、この後里に帰ってメシ奢る約束したんだよねぇ」
「あ〜それで・・・食い物の恨みは恐ろしいもんだ」

二人は何気なくうんうんと頷くのだった。
突き刺さるようなサクラの視線他所に二人は先程の話に話題を戻す。

「で?どうするよ?今晩」
「そうだねぇ。ま、しょうがないか・・・今日のところはサクラとナルトには許してもらうとするか。アスマ、その慰労会オレも出席
するよ」
「そうこなくっちゃなぁ!じゃぁいつものトコで7時に集合だからな」
「はいよ〜」

ニカっと白い歯を見せて笑いながら、きびつを返しアスマは里の方向へと歩いていった。
アスマの後姿にカカシはヒラヒラと手を振り見送った。
視線を部下のいる方角へと戻した時、サクラの痛い視線はまだそのままだった。ついでに掴みあっていた残り二人の
視線も同じような状態でカカシへと向けられていたのだった。
アスマに向けてヒラヒラと振っていた手をカカシは3人にも向けたのだった。
そして・・・

「また、今度奢ったげるからね〜♪」

とカカシは言い放った。

「「カカシせんせーの嘘つきぃーっっ!!」」(きー)(きー)(きー)(きー)注意:やまびこ
「フンッ」

響き渡るサクラ、ナルトの叫びは当然のものだろう。
甲高い二人の叫び声は虚しく高い空へ吸い込まれていったのだった。






続く

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