「大人ってば簡単に約束破っちまうんだってばよっ!」

ぷんぷん怒りながら畑仕事の疲れも忘れズカズカと大股で帰り道を歩くナルト。

「そうよそうよっ!カカシ先生は特にそうよっ!!毎日毎日遅刻してくるしっっ!!!」

同じくナルトに歩調を合わせてコチラもまたズカズカと歩くサクラ。
サスケは元々歩くのが早い所為か、普段と変わりなく二人の横に並んで歩く。
一緒に歩いていないのはカカシだけだった。
後ろにいることをしっかり分かった上でわざと大きな声で、ナルトとサクラは不満を言い続けた。

「言った先から、コロコロ予定変えられちゃ振り回されるほうは堪ったもんじゃないってばよっ!!」
「そうよそうよっ!カカシ先生っていっつもそうっ!!」
「「ねーっ!!」」(ナルト&サクラ)

こういうときにはいつも以上に息が合うナルトとサクラだった。
ハモる声も息ぴったり。

「・・・・酷い言われ様だコト・・・・」
「反省しろってばっ!」
「そうよそうよっっ!!反省よ!反省・反省・反省ぇぇ〜!!!」

カカシの反論に二人は歩みを止めクルリとカカシの方を振り返りビシッと指差し「反省」の言葉を繰り返す。
指差されるカカシは苦笑を浮かべ、ポリポリと頭を掻いた。そして再びささやかに反論を返す。

「俺、猿じゃないんだけど・・・(汗)」
「「猿のがマシっ!!!!」」

振り向きざまにビシッと指差し二人に言い放たれて、両手を上げて降参のジェスチャーをするしかないカカシだった。
その表情はこれといって別に懲りてもいない様子だった。






IN THE LIFE   〜作戦実行〜


「じゃぁ此処で解散ね」

カカシは里の繁華街に入る手前の辻で解散の号令を出した。
今日の任務はこれで終了である。
その声の号令と共にサクラが積年の恨みと言わんばかりに、明日の約束をカカシに釘刺す。

「明日絶対に約束守ってよね!カカシ先生」
「はいはい、お姫様」
「やったーvvvカカシ先生チョー男前vvvvvv」
「サクラちゃんやっぱり現金だってば・・・」

隣ではしゃぐサクラを呆れた表情で目を細めて眺めるナルト、相変わらずの無言のサスケ、対照的な構図の
この3人は個性があって常に楽しい。
サクラのコロコロと表情が変わるところはナルトにも負けていないと、心の中で思うカカシだった。
3人はカカシの解散の号令に従いそれぞれの帰り道につこうとした。
しかし、ナルトだけは何かを思い出したかのようにカカシの方を振り返り駆け戻ってきた。

「ん?何?ナルト」
「あのさセンセ。今日晩ご飯いらない?」
「ん〜・・・遅くなるからなぁ・・・でも食べるvvナルト作っておいてくれる?」
「うん!わかったってばよ。あんま飲み過ぎないようにね」
「はいはい。それじゃあ日付変わるまでには帰れると思うから」
「うん。じゃね!センセ」
「おう。お疲れー」

後ろを振り返りながら手を振り駆けて行くナルトがなんとも可愛らしく頬の筋肉が緩むカカシであった。
顔当てをしていなかったらさぞデレデレした表情が見られることだろう。
一緒に住み始めてからカカシのナルト溺愛振りもかなりなものになってきている様子だ。
『可愛いなぁ・・・ナルトv』
緩む頬を顔当て越しにペチペチと叩き、表情を元に戻しながら『人生色々』へ向かって歩き出すカカシであった。




                           ※※※   ※※※  ※※※

「遅ーいっ!コッチだよ!!カカシー!!」

ポケットに両手を突っ込みながら背中を丸めて暖簾を潜り店内に入ってくるカカシの姿を見つけたアンコがジョッキ片手に大きく手を振りながら奥座敷から顔を出す。
どうやら殆どのメンバーがそろっている様子だった。
カカシは、アンコの見える奥座敷の方へと歩いていった。
8畳ほどの広めの座敷には各班の担任教師である上忍、そして中忍試験での試験官を務めた上忍が揃っていた。

「皆サンお揃いで〜」

片手を上げて挨拶交じりに靴を脱ぐカカシ。
其処に座敷の上座に座っていたアンコが空のジョッキを片手に近寄ってきた。

「遅いっつーの!待ちくたびれて飲んじゃったわよ」

アンコはカカシの胸の辺りにトンっと小さく拳を当てて、空のジョッキを見せ付ける。

「アンタはいつも待たないでしょーよ」

カカシは苦笑を浮かべながらアンコの肩をポンと叩いた。

「えへへ〜だって喉渇いてたんだもん。ビールジョッキ大でおかわりね〜!!あ、カカシ奥入って、奥!もー皆飲んでるしさ、アンタ何飲むの?」
「ん〜とりあえずビールかな」
「OK!大でいいよね?」
「ああ。サンキュ」
「大将ぉー。生大もう一つねー」

カカシはアンコに進められた上座の方に行き、その場にある座布団の上に腰掛けた。
一息ついて周りを見渡せばよく知る者達の顔ぶればかりだった。
いつもの死と血の匂いの漂う日常を忘れて、笑いあう仲間同士を見てカカシはホッと安心感に微笑む。
そんなカカシに肩を叩く人物がいた。
振り向いてみると、いつものよく見る悪友の顔が其処にあった。

「よぉ!カカシ、来たか」
「ああ。お疲れさん」

アスマはカカシの直ぐ隣の空いた席へ腰を下ろした。

「こうやってお前とやり合うの久しぶりだな」
「そういえばそうだったなぁ」
「なんか最近お前付き合い悪くなったもんなぁ〜」

アスマはニヤニヤとカカシの顔を覗き込みながら皮肉たっぷりに厭味を言った。
ナルトがカカシの家に来てからは、周りの上忍からの酒の席の誘いは全て断っていた。
家に帰れば、愛しい子が待っていて、しかもかいがいしく食事の用意もしてくれている。
ナルトが家に来るまでは、カカシは家に戻っても一人だったし、ましてや食事の支度など面倒臭くってやる気にもならなかった為
どうせなら食事も済ませられるしと毎日のようにアスマやアンコ、紅や他の上忍達と、この店に飲みに来ていた。
まるで結婚した男のように、がらりと生活が変わってしまったのだ。
付き合いの悪くなったカカシに、アスマは皮肉の一つも言いたくなったのだろう。
それもそのはず、カカシがこの店に来なくなってから早くも1ヶ月経とうとしていた。

「や〜最近忙しくてさぁ・・・」
「うずまきだろぉ?誤魔化すなよ」
「あ〜バレてたぁ?」
「チェ・・・よっぽどお前あのガキに入れ込んでんだなぁ。エェ?
「ん〜・・・可愛いでしょvナルトvvvいくらアスマでも手ぇ出したら殺すからねvvvvv」

多分カカシの台詞は本気だろう。それだけ今のカカシにはナルトしか見えてないのだ。

「けったくそ悪ぃな(笑)手なんか出すかよ。ションベン臭ぇガキによ。しかし、里中の女は泣いてるぜ?お前に恋人ができたんじゃないかってよ」
「恋人ねぇ・・・・なれたらいいけどサ・・・どうもあの子はニブチンでサ。俺の気持ち多分分かってないよ」
「そうなのか?お前の可愛がり方だったら普通気づくんじゃねぇかな?」
「まぁ俺も悟られないようにしてるけどね」

カカシは参ったように頬をポリポリ掻きながらほんのちょっと寂しそうに微笑んだ。
すると其処に酒の注文から帰ってきたアンコが二人の背中越しにのしかかりながら話しかけてきた
そして注文を受けたカカシの大ジョッキをカカシに渡す。。

「なあに?何話してんの?はいこれカカシの大ジョッキね」
「ああ、サンキュ」

大して重みは無いのだが、急に来た圧迫感にアスマは鬱陶しそうにアンコの腕を外しながら厭味を言った。

「何でもねぇよ。つーか重いよお前」
「何!ナイスバディのあたしに向かって重いとは何事よ!」

冗談っぽく睨みあう二人に呆れた笑いを浮かべながら、カカシは仲裁に入った。

「まぁまぁ。アンコが里中で一番ナイスバディなのは分かってるからさ。落ち着いてって」

そのカカシのお世辞に機嫌を良くしたのかアンコの表情がパっと変わる。

「さすが写輪眼のカカシねぇ!よ〜く分かってるわぁvvvあたしの事vvv」
「いやいやvあ・・・それよりさっきj紅が呼んでたような気がしたけど、いかなくていいの?」

アスマとのナルトを話題とした話を聞かれたくなくて、カカシはアンコに対して嘯いた。

「あ?そぉ?じゃぁ行って来るわ」
「ああ、飲み比べはその後でもいいでしょ?」
「いいよ、じゃぁ後でね。覚えときなさいよ?カカシ」
「はいはい」

アンコが紅の所に行ったのを見計らって、アスマとカカシはナルトの話題を再び持ち出した。

「なさけねぇなぁ・・・それにしても」
「何が?アスマ」
「木の葉の里一腕の立つ写輪眼のカカシが、一介の下人に心奪われるとはよ」
「まぁ、自分でも驚いてるんだけどね。此処までナルトのこと好きになるなんて思っても見なかったからさ」

溜息を一つ、アンコが運んできた芳醇な泡が立つジョッキに口をつけグイッと渇いた喉に冷えたビールを流し込んだ。
炭酸の心地いい刺激と喉越しが渇いた喉だけじゃなく五臓六腑に染み渡っていく。
喉を鳴らし美味そうにビールを飲むカカシの姿を頬杖をつきながらアスマが何かを考えながら眺めている。
そして、徐に懐から取り出したタバコを一本口にくわえ火をつけた。
胸中に紫煙を送り込み、そして吐き出しざまにとんでもないことを口にする。

「さっさとヤっちまえばいいのによ?」
「ブッ!!」

勢い良く飲んでいたカカシの耳に入ったアスマの台詞に驚き、口に含んでいたビールを逆流させてしまう。
その時に、喉を通っていたビールが器官に入り激しくむせ込む。
しかも炭酸がしみてやたらと喉が痛い。

「ゲホッ!アスマッ、ゴホッ!おまッ・・・ゲホゲホッ!!」
「あらまぁ・・・上忍のカカシさんともあろうお人が、こんな台詞で動揺しちゃってまぁ・・・」

カカシは噴出したビールが飛び散ったところを手元にあったお絞りでむせながらも拭き取った。
そして、余計なことを言うアスマに対してにらみを利かす。

「おぉ〜コワいこと」
「そんなことできたらとっくにやってるさ」

一瞬の睨みも、頭をめぐる愛しい人の事でいっぱいになると眼光も影を潜めてしまう。
急に落ち込みだすカカシ。

「お・・おいおい。カカシ」
「はぁ〜〜〜〜・・・・。そうなんだよなぁ・・・普通に告白していけるような相手じゃないもんなぁ・・・・」
「わ・悪かったって、そう落ち込むなよ。なんなら俺力になってやらんことも無いぞ?」
「っていうかね、あの子にそういうコトさせるのってなんか可哀相じゃない?俺ソレ考えるとできないんだよねぇ・・・。でもね、家に帰って可愛いエプロンなんかつけてホカホカのご飯用意しながらアノ笑顔で『おかえりなさいだってばよ〜vv』なんて言われたらソレこそ『今日こそは!!』とか思っちゃうんだけど実際本人のあの可愛い目見てたら何にもできなくなっちゃうんだよなぁ・・・。可愛すぎるんだって〜・・・ずるいよなぁ〜」
「それ・・・惚気てんの?嘆いてんの・・・?」

猿飛 アスマ 独身 彼女なしにはカカシの話はうらやましい以外の何者でもなかった。
暗い表情で落ち込みながら話すカカシにアスマは鉄拳を食らわせたくなる瞬間だった。

「はぁ〜〜〜・・・ナルトぉ・・・可愛いvv」
「死ねや・・・」
「冷たいなぁ。友達だろ?」
「そんじゃぁまぁ俺に任せろよ?」

苦笑を浮かべながらポンポンとカカシの肩を叩きながらアスマは元気を出させようと宥める。

「何かいい方法あんの?アスマ」
「無い事も無い。しかしなぁ・・・」
「何よ?」
「お前が後から俺に文句言いに来ないって言うのなら、
絶対にうずまきとお前を両思いのしかもオトナの関係にしてやるよ」
マ・マジかーっっ!!!

カカシは落ち込んでいたこともすっかり忘れ、アスマのその申し出に食らいついた。
思わずカカシはアスマの胸座を掴み上げてしまう。

本当に?本当に本当なんだろうな!その話!!

・・・・・ザワザワザワ・・・・・

カカシの大きな声に周りの人間達は目を白黒させてアスマとカカシの二人に視線を一斉に向ける。
周りはどうやらカカシとアスマがケンカをおっぱじめたと勘違いし、心配そうな表情をしている。
刺さる視線が痛い。
其処に一人の人間が箸と肴の入った器を片手に勢い良く立ち上がった。

「何やってんだい、二人ともっ!ケンカなら表でやんな!!此処は楽しい酒の席だ、野暮なことすんじゃないよっ!」

紅と酒を酌み交わしていたアンコが、箸で二人を指しながら怒鳴り散らす。
その表情はかなりのご立腹の様子。
アスマは謝るようなジェスチャーをアンコに見えるようにし、胸座を掴んでいるカカシをその場に据わらせる。

「悪ぃ悪ぃ、アンコ。コレはケンカじゃねぇんだ、ホラ、カカシも落ち着け。皆も俺達に構わずやってくれや」

アスマはにっこりと笑い、平静を装う。周りの人間達も、それならとそれぞれの元の話題へと戻っていく。
空間は元の雰囲気へと色を戻した。

「お前声デケェよ」
「悪い・・・ってかその話し本当なんだろうな?」
「ああ・・」
「しくじり無しだぜ?」
「ああ・・」
「本当に本当に本当なん・・・」
「しつこいってお前!絶対に上手くいくから任せろっていってんだろ?」
「くぅ〜っっ!持つべきものはやっぱ友達だよな、アスマv」
「調子いい奴め」
「よぉ〜し飲むぞぉ〜!今日はなんていい日なんだvvアンコォ!燗酒頼んでよ!」
「あいよー」

カカシは喜ぶ表情を隠しもせずに、アスマの背中をバンバン叩きながら片手はガッツポーズをしっかり取っていた。
そして、機嫌よく飲み始めたアンコに酒の追加を頼んだ。
カカシのご機嫌そうな表情は周りの人間が引くくらいのモノだったのは言うまでもない。






続く
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