[カカシせんせー・・・」
「ん〜?何だい?ナルト」

火事現場からの小さな引越しを終え、生活用品を山のように買い込んだ二人が、早速整頓作業に取り掛かっていた。
二人の両手に持ちきれないほどの沢山の荷物を何とか持ち運び家に帰った二人は、荷物の多さに悪戦苦闘していた。







IN THE LIFE  第3話・巻物


「買いすぎだってば・・・」
「そっかぁ?もうちょっと買いたかったんだけどねぇ〜」

買ってきたナルトの洋服の値段札をとり、ひとつひとつ箪笥の中にしまっていく作業をしていたナルトが
あまりの服の多さに流石に困惑した表情を浮かべていた。
厄介になるのは何もここまでしてもらう為ではないと思っていたナルトは、カカシにいらぬ金を使わせたのではないかと
心配になってくる。
これだけの品物を買い揃えてくれた事にも驚くが、更に買い足りないというカカシの言動にもナルトは呆れ顔を浮かべていた。

「オレもーこれ以上何もいらないってば・・・」
「子供が遠慮するもんじゃないの。ナルトの悪い癖だよ?人に頼らないトコ。普段はあんなに素直なのにねぇ」

オトナを、人を頼る事を知らないこの子供は、今までどうやって困難な事をクリアしてきたのか、カカシには今までの
ナルトの生活を想像し少し寂しい気持ちになった。
『まさか・・・此処まで考えるようになっちゃったとはね・・・俺も相当かもな・・・』
自嘲気味な独り言が思わず口をついて出てきてしまう。

「でもさ!でもさー!!」
「はいはい。ナルトの言いたい事は分かってるからさ。持ってきた巻物片付けてくれる?」

何か言いたげなナルトにこれ以上遠慮の文句は言わせないとばかりにカカシはその上から言葉をかぶせる。
ナルトは言葉を引っ込めしぶしぶと巻物の山を整頓しにかかる。

「それにしても、沢山巻物もたっらんだねぇ・・・ナルト」

服を折りたたみながらカカシはナルトに問いかけた。

「うん。実はだま全部見てないんだってば。だから知らないものとかもあるんだってば・・・たとえばさ・・・これ」
「うん?」

そういいながらナルトはある巻物を持ってちょこちょこと服をたたむカカシの傍に近寄っていった。
手は服を折りたたみながら、顔だけナルトの持って来た巻物に目を通す。
その巻物の術の解説内容を見たカカシは目を丸し、ついでに硬直する。
服をたたむ作業をしていたカカシの手はマネキンのように止まってしまった。

「これ、俺には難しい漢字ばっかりで読めないんだってばよ」
「・・・・・これ・・・・誰からもらったの?・・・・・もしかして火影・・様?」
「え?・・・ううん・・・アスマせんせーだったかな・・・?あれ?ハヤテせんせーだったっけな?ん?・・・カカシせんせー?」

巻物をみて硬直しているカカシをナルトは不思議そうな顔で覗き込んだ。
硬直というか、唖然というか・・・どちらとも言えないカカシの顔に一緒にナルトも巻物に目を落としていく。
巻物に目をやろうとしたナルトにカカシは焦って、キレイにたたんだ洋服もそっちのけで大慌てでナルトの目を覆い隠す。

「わぁぁー!駄目!!子供がこんなの見ちゃ駄目!!!!」
「わぁー!何だってばよーせんせー!!」
「これは上忍しか見ちゃ駄目な巻物なのーっ!!」
「そんな事、この巻物くれたせんせーはゆってなかったってばよーっ!!」
「とにかくダメったらダメーっっ!!!!」

目を覆い隠され視界真っ暗で慌てるナルト、なんとか巻物に触れさせないようにしようと必死のカカシの攻防が延々繰り広げられた。

『淫術』

巻物にはそう記されていた。
カカシはここまで心底ナルトが漢字を苦手としている事を感謝した事はなかった。
可愛いナルトにこんな術を教えられるわけが無いし、『なんて読むの?どんな術?』なんて聞かれても答えるのにも困ってしまう。
半ば強引にナルトの手から巻物を奪いシュルっと丸める。
そして・・・

「封印!」

カカシの指先で練られたチャクラを巻物の止め紐に掛けた。チャクラはまるで接着剤のように張り付き巻物を封印してしまった。
これで、巻物はカカシのチャクラを解かない事には開く事はできなくなってしまった。

「ああーっ!!!せんせー何するんだってばよー!!」
「これは先生が預かる。ナルトは他にも覚えなきゃいけない術があるでしょ?まずそっちを覚えてからね」
「これオレがもらった巻物だってばよー!返してってばー!!」

高々と頭の上に巻物を掲げ、ナルトの手が届かない様にしながらカカシはナルトの部屋を出て行こうとする。
ナルトはカカシのシャツの端をしっかと握り、カカシを逃がさないようにするが軽くかわされ巻物奪還に失敗する。
部屋に残ったのはぶーたれたナルトだけだった。

『ったく・・・アスマ、ハヤテの奴ぅ〜ナルトになんて巻物渡すんだ!』

問題の巻物を片手にしっかりと握り、ズカズカと御立腹な様子でカカシは廊下を歩き自室へ入っていった。
ベッドの横にある小さな三段引き出しの一番上の引き出しの奥に巻物をしまい込む。

『淫術』とは・・・
薬で効果が認められない忍に対して掛ける幻術の一種で、己のチャクラによって相手の脳内のドーパミン・アドレナリン(脳内麻薬とも呼ばれる)などの快楽ホルモンを異常分泌させ幻惑し術を掛けた者に溺れさせる術だった。
しかも、普通の忍が使用する事はほとんど無く、色専門もしくはくノ一が使用する術として一部の人間にしか渡らない巻物だった。
そんな術をあのナルトにもし『せんせー実験台になってってばよー』なんて言われでもしたら
自分はナルトを襲いかねない。いや、100%間違いなく襲うだろう。
そんな事で、この楽しい日常を壊す事など絶対にしたくなかったカカシだった。ナルトと自分を思えばこその行動である。

そんなカカシの心も知らずにナルトは一人、部屋の片づけをしながらプリプリ怒っていた。

「なんだってばカカシせんせー!あんな事する事無いってばっ!・・・・もしかして・・・・あの巻物に書いてある術って相当凄いものなのかも知れないってば!カカシせんせーオレに追いつかれるのが悔しくって巻物隠したんだってばねー。こーなったら絶対にあの巻物取替えして、んでもってその術
覚えてやるんだってばよ!!!」

親の心、子知らず。もといカカシの心、ナルト知らず。
オトボケ上忍と修行バカ下忍の激しい攻防がこの先の生活の中で日々繰り広げられる事になる。

「絶対にあの巻物の取り返すってばよ!!」

小さな拳を握り締めて、白い壁に向かって一人誓いを立てるナルトだった。








続く

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