「オイ!こっちだこっちー!!」
「え?どこどこ?」
「ほらあそこだよ。アレアレ」
「わぁ〜・・・・・大変」



任務を終えて疲れた身体を引きずって家路につけば
何やらやけに騒がしく道行くもの皆同じ方向に走っていく。
誰もが皆ただならぬ表情で、その方向を指差している。
好奇心溢れるナルトはただならぬその雰囲気を見過ごすわけが無かった。


「何だって皆あんなに急いでるってば?」


うずうずとナルトの中の『知りたい虫』が騒ぎ出し、走っていく者達の後を追い自分も走り出す。

「なんだってば?なんだってばー?」

走っていく者達の行く方向は自分の家の方向だった。
角を曲がればナルトの部屋があるアパートだ。
自分の家の近くで何があるんだろう?
と思いながら その角を曲がれば・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・んなっ!」


なんと、黒山の人だかりの向こうに見える自分の家が・・・・・


“ゴオオオオオオオオオオォォォォォ“



燃えていた・・・・。




「なんだってばよぉぉぉぉ〜っっ」










IN THE LIFE  第一話 避難生活






延々燃え続けたナルトの家は、鎮火にかなりの時間を要した。
古い木造住宅は燃え方が派手だった。
築20年は軽く越えたナルトのアパートは隣の部屋の住人の煙草火が原因で
出火したと消防団員から告げられた。
当然煙草を吸わないナルトにとって、この怒りの矛先は煙草を吸う大人達に向けられた。
道行く、喫煙しながら歩く大人達に睨みを聞かせながら行き場のない怒りを
もてあましているナルトだった。

「あんまりだってばぁ〜・・・・今日楽しみにしてた新発売のキムチ入りラーメン黒コゲだってばよ〜・・・」

今のナルトは今晩のゴハンも、暖かいベッドも、着替えも、新発売のキムチ入りラーメンも
文字通り帰る家すらなかった。

「はぁぁぁぁ〜〜・・・・」

海の底よりも深いため息がナルトの口を付いてでる。

「この先どーすりゃいいんだってば・・・」

直前のショックな出来事にナルトの頭の中は相当パニックになっていて
次起こさなくてはいけない行動が見えてこなかった。

と、その時

『困った事があったらいつでも言いにくるンだぞ』

優しいかつての担任の先生の顔が浮かんだ。
いわずと知れたこと。
ナルトの大好きな人ベスト3に入る『うみの イルカ』その人だった。

「そうだってばよっ!イルカ先生ンとこいってみるってばよ〜〜っっ!!」

自分ながら「あったまイイ♪」と言いながら、まだ仕事中であろうイルカのいる
アカデミーへとナルトは走り出した。






「ゴホ・・・・イルカ先生なら昨日から任務で出かけてますよ」

「え゛・・・・・」

息を切らせながら走ってきたナルトは執務室のハヤテを捕まえてイルカの居所を聞いた。
ところがしかし、ハヤテの口からはいつもいるはずのイルカがこんなときに限って
任務に出たという鬼のような台詞を聞くこととなった。

「どうかしたのですか?ナルト君?言伝があるなら私から伝えておきますが・・・?」

「・・・・・・・・いいってば」

見下ろすナルトの表情がどんどん青ざめていく。
ナルトの背景はまるで何かが憑いているのでは・・・と思ってしまうくらいに
重苦しいオーラを発していた。
そのただならぬ雰囲気に思わずハヤテも焦った様子で声をかける。

「ナ・・・ナルト君?」

「ありがと・・・てば・・・ハヤテせんせー・・・」

ナルトはふ〜っと魂が抜けたように、180度回れ右をして
ふらふら不確かな足取りでアカデミーを後にした。

「そんなにイルカ先生が好きなんですかね?」

大きな勘違いをしている、ハヤテだった。





「どーするってば・・・これから・・・」

結局振り出しに戻ったナルトだった。
一番頼りにしているイルカがいないって事は、他に誰を頼りにしていいのだろうか?
イルカ先生がダメなら・・・・。

「そうだってば、先生って他にイルカ先生だけじゃないってばよ!」

ポンと手を叩き、何やら大急ぎで走り出すナルトだった。
向かった先は・・・

「カーカーシせーんせー」

ドンドンとカカシの住む部屋の玄関ドアを遠慮無しに叩きまくる。
中からノソノソと現在の自分の担当教師、カカシが現れる。

「なぁんだ、誰かと思えばナルトじゃない。どうしたの、急に?」

さっき任務が終わって解散したばかりなのだが、あんな事があったせいか
ものすごく長い時間が経っていたように思えたナルトだった。
信頼できるカカシの顔を見たとたん、安心したせいもあってか涙で目が潤んできた。
ただならぬナルトの様子に、玄関じゃなんだからと部屋の中に招き入れる。
ナルトをリビングのソファーに座らせ、カカシはキッチンへと入っていく。
そして、しばらくするとホットミルクとコーヒーの入ったマグカップを持って
リビングへと戻ってきた。
ナルトの横に腰掛けて、小さな両手に少し大きめのマグカップを持たせる。

「ありがとってば・・・せんせ・・・」

「んで?何があったんだ?ナルト」

俯いたナルトの顔を覗き込んで、急に訪ねてきた理由を聞いてみる。
しばらく黙ったままのナルトだったが、その横顔からはポロポロと大粒の涙が
溢れ出して来た。
口元まで持ってきたホットミルクのマグカップをそのままに肩を震わせ声を殺して
泣き出す生徒に内心大いにカカシは焦りまくる。
しかも、その泣いている生徒は少なからず自分が想いを寄せているあのナルトだ。
ナルトには申し訳ないが、カカシにはその泣き顔がどうしようもなく愛しいものに見えてしょうがなかった。

「え・・く・・・・うぇ・・・・」

殺しきれない声が引き結んでいた唇からこぼれ出す。
カカシは飲んでいたコーヒーのマグカップをガラステーブルに置き、そっとナルトの肩を抱きしめる。

「何が・・・あったんだ・・・?」

優しく諭すように問いかける。
片手でナルトの肩を、そしてもう片方の手はナルトの小さな頭をその胸の中に抱き込む。
小さな子供をあやすようにポンポンと背中を一定のテンポで叩き安堵感をナルトに与える。
小さく項垂れたナルトは涙の原因を話し出す。

「あのね・・・あのね・・・おれン家・・・燃えたってば・・・よ・・・・全部・・・全部・・・燃えちゃったでばよ・・・ぉ」

「そうだったのか・・・それで・・・」

もし、他の子供たちなら自分が住んでいる部屋が燃えてしまっても、別に帰る家はあるだろう。
しかし、この子には『別の』帰るところもない。
どれだけ、寂しく思っただろうか・・・。
やっと、自分を認めだし始めた人間が増えてきて、やる気も、希望も出てきたこの時期に
事故とはいえあまりにも惨いとカカシは思った。
カカシはある事を腹に決め、泣きじゃくるナルトの顔をそのままに声をかけた。

「ナルト・・・これからどうするの?」

小さな子供にはこれから先のことなど見当もついていないだろう。
ナルトから返ってくる答えを見越しての問いかけだった。

「わかんない・・・てば・・・どー・・・・したらいいのか・・・」

「そうだね・・・もしね・・・ナルト。ナルトさえ良ければ、此処にくるか?」

「え・・・!?わわ・・!」」

カカシの胸の中に納まっていた小さな頭が『ばっ』と離れる。
両手に持っていたマグカップの中のホットミルクが零れそうになって、ガラステーブルにマグカップを置く。
ナルトはカカシがこんな事を言い出すなんて夢にも思っていなかったのだろう。
ちょっと、あたふたと慌てて一生懸命『そんなの先生にメーワクだってば!』
と自分の身よりカカシの心配をする。

「じゃぁなんでナルトはオレのところにきたの?」

「・・・う・・・そ・・それは・・・」

口ごもるナルトがとても可愛く愛しかった。
常にこの子は他の人間のことを考えて生きている。
ちょっと位人に頼って甘えたって許されることなのに。
物心ついたときから、頼れる人間は誰もいなくて、常に一人で生きてきたナルト。
甘える事を知らずに生きてきたナルトにとって、頼れる存在として自分を選んでくれた事が
カカシには嬉しくてしょうがなかった。
ナルトにとって自分は『ただの担当教師』だけだと思っていたからである。

「行くところ・・・無いンでしょ?」

ナルトはコクリと小さく頷く。
ふっと優しく笑いかけ、ナルトの頭をクシャクシャと撫でる。

「子供は遠慮しなーいのvナルト。先生は別に迷惑とかそんな事思わないよ。むしろ大歓迎だね」

思ってもみなかったカカシの言葉にナルトの表情は『パーッ』と明るくなる。
いつもの、元気なお日様の笑顔。

「ホントだってば?先生!オレってばメーワクじゃないの??」

クリクリの碧眼を更に大きく見開き、カカシの顔を見上げる。
『眩しいね、ホントに』
クスッと微笑んだカカシはそのお日様の笑顔を目を細めて見つめた。

「当たり前だろ?お前さえ良ければずっと此処にいていいんだよ?」

「やったぁ〜!カカシ先生大好きってば〜!!」

ガバッと抱きつき全身で嬉しい気持ちを表す。
飛びついてきたナルトを抱きとめるが、飛びついた勢いは殺せなくて、背もたれの無いソファーの
肘置きの方へ二人いっぺんになだれ込んでいく。

「ちょ!ちょ!!ナルト!!!」

「あ!ご・・・ごめんってば」

身体を支えてくれる背もたれが無いところから落ちそうになるのを、カカシはかろうじて腹筋で
二人分の支える。
そして、「大丈夫大丈夫」と言いながらぎゅっと『安心』をあげる為に華奢なその身体を抱きしめてやる。

「オレ!先生ン家でお世話になるんだったら何でもするってば!!」

「ははは。何でもだなん・・・て。何でも!?」

『何でもするってば!!』その言葉に過剰反応を見せるカカシだった。
『何でも何でも何でも何でも何でも・・・・・・・・・』
愛しい愛しい自分の想い人がこんな事を言ってくれるなんて、男冥利に尽きると勝手な
妄想を廻らせ抱きしめるナルトの肩口で頬を緩める変態教師カカシの姿がそこにあった。
そんなにやけるカカシの顔など見えるはずもないナルトは嬉々として恩師(と一応認めている)
の首に抱きつき『先生大好き』の台詞を繰り返す。




はてさてこの先どうなることやら・・・。
ナルトはカカシの思惑など露ほども知らず、先の新生活に胸を躍らせていた。







続く






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