祠を出た二人は、西の森の中を疾走していた。
二人の目的は隣国の偵察だったが、里が守り続けてきた西の森の中の様子も気になっていたため横切っていくことにした。
二人の胸中にはえもいわれぬ不快な胸騒ぎが起こっていた。
そして、その不快な胸騒ぎは現実のものとなる。




証 〜第7章〜




「やはりな・・・思ったとおり乱獲が始まっている」
「うん・・・」

二人が疾走する足元には、森の獣達の血痕や、抜け落ちた羽や体毛が点々と落ちていた。
この森には珍しい動物達が生息していた。
金色の角を持つ鹿、虹色に変化する羽を持つ鳥、瑠璃色の瞳をしたウサギ、金しか目のない人間達にはさぞこの森は宝の山に見えることだろう。
地面に張り付いている血痕や体毛はその非道な人間の仕打ちだと物語って、まるで自分達を責めているかのようにサスケとナルトには思えたのだった。
中にはただ殺されただけの、獣の死体までもが転がっている。

悲痛な表情で疾走していたナルトは何かを見つけ思わず足を止め足元を見つめる。
その気配にサスケも立ち止まりナルトのほうを振り返る。
振り返った見たナルトの足元には小さな瑠璃色の小鳥の屍が横たわっていた。
ナルトは徐に鳥の亡骸の傍で跪きそれをそっと抱き上げた。
そしてその両掌で横たわる鳥をしばし見つめていた。
瑠璃色の鳥は、まだ巣立って間もないだろう。
これから自由に大空を羽ばたいて行った筈だったのに。

「サスケ・・・ちょっとだけ時間欲しいってば・・・」
「ああ・・・早くしろよ・・・?」
「わかってるって・・・」

ナルトはきょろきょろと辺りを見回し直ぐ傍の大きな木の元へ歩み寄った。
そして、その木の根元を片手で掘り始めた。もう片方の手で鳥の亡骸を優しく包みながら。
柔らかい腐葉土は簡単に掘り返せた。そして小鳥の身体のサイズにあった穴を掘り、その中に鳥の亡骸を横たわらせた。
ゆっくり、優しく土をかぶせていく。
かぶせていく、土にポツポツと水滴が落ち始めた。
その滴は、ナルトの碧眼から零れ落ちた涙だった。

「守ってやれなくて・・・・ゴメンよ・・・。
オレに・・・・もっと・・・力があれば・・・・。オマエ自由に空飛べたのにな・・・・
ゴメンよ・・・・ゴメンよぉ・・・・」
「ナルト・・・」

ナルトは手についた土を気にすることもなく、涙を拭い続けた。
サスケは、傷心するナルトの肩に手をかけ、慰めるように肩を抱き寄せた。

サスケとナルトの目には今の森の状況が、別れを告げた里の状態と重なって見えていた。
死屍累々、折り重なる里の者達の死体。
森の動物達の無慈悲に殺され転がる死体。

略奪され破壊尽くされた建物。
薙倒され、燃やされた木々。

ナルトは無性に湧き上がる悲しみと、悔しさに瞼を伏せた。その伏せられた碧眼からは新たな涙が零れていた。
サスケは、ナルトの肩をポンと叩き、先へ進もうと無言で促した。
それを察知したのかナルトは頬を伝った最後の涙を拭いながら立ち上がった。
そして自分の肩に置かれたサスケの手に自分の手を重ね『もう大丈夫だ』と瞳で語りかける。新たな決意を秘めた眼差しを向けながら。

「行こう・・・・サスケ・・・」

サスケには心優しいナルトの痛みが良く分かっていた。
ナルトは、常に里の人間に疎まれ、蔑まれてきた。
そんな時、ナルトの心を癒してくれていたのは、この森だった。
動物達には、人間の都合など関係のないこと。
等身大の自分を受け入れ微笑み、優しい風で愛でてくれる自然がナルトは大好きだったし大切だった。
いつもお気に入りの高台から、この森を眺めるのが好きだった。
任務でドジを踏んだ時も、先生に怒られた時も、里の人間に貶された時も、初めて自分を認めてくれた人ができた時も、初めて仲間ができた時も。
悲しい時、淋しい時、悔しい時、そして嬉しい時・・・。
いつだってこの森に慰められてきたナルトにとっては特別な存在だったのだ。
そんなナルトを常に見守ってきたのは、ライバルであり親友であるサスケだった。
サスケの気持ちの中にもナルトの森に対する思いが流れ込み、ナルトの思うことが手に取るように分かっていたのだった。
二人は、小鳥の眠る木の下から再び走り出した。

目指すは隣国。

自分達の帰る場所を奪った輩を探す為に・・・。



続く

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