祠の飾り格子から入り込んでくる朝日が眩しい。
ゆっくりと目を開けて見れば、外は綺麗に晴れわたっているのがわかる。
日差しがとても暖かかった。

チチチ・・・・・

山鳥の澄んだ囀りも遠くからこだまし、耳に心地いい。
昨日から走りづめだった身体も軽くなり疲労が軽減されたことがわかる。
ナルトはぼんやりとした頭を覚醒させ、ゆっくりと身体を起こした。

「痛・・・・っ!」

その時に首筋に酷く鈍い痛みを感じた。

「??」

自分の寝相の悪かった所為での寝違いか、それとも寝ている間にぶつけたのか原因が分からず首を傾げるばかりだった。
痛みを感じる部分を摩りながら首をかしげていると、背後からサスケが声をかけてきた。

「起きたのか?ナルト」

サスケは祠の壁にもたれ、心なしか疲れた表情を浮かべていた。
昨夜の出来事を当然ナルトは知る由も無かった。




証 〜第6章〜




「あぁ・・・サスケおはよ・・・」
「ああ・・・良く眠れたか?」
「うん・・・・まぁ」
「・・・・・そうか」

静かな空気の流れに混じる不穏な空気。
ナルトは目覚めてからその空気の流れに敏感に反応していた。

「なんか・・・あったてば?・・・・・昨夜」
「・・・・・・・・・・」

サスケは暫く黙り込んでいた。
サスケ自身昨夜のことを全てナルトに話すのは気が引けた。
実際、話をすればナルトがどのような反応を返してくるか分かっていたからである。

「昨夜・・・お前の寝相の悪さにたたき起こされて・・・・それから眠れていない」

サスケは喉まで出掛かっていた昨夜の出来事を飲み込み、とっさに作った嘘を吐いた。
今、此処で昨夜のことは言うべきではないと何故か思ったサスケだった。
ナルトの精神状態をあまり左右するようなことは避けたいサスケだった。
それは、ナルトに対する気遣いもあるが、妖狐への警戒心からもきているが所以の行動だった。
サスケはわざと不機嫌そうな顔をしてナルトに寝不足であることを雰囲気で感じさせる為に、眉間にしわを寄せた。

「わ・・わりぃサスケ。オレってば全然気がつかなかったってばよ」
「いや・・・いい。どうせ見張り立てておいた方が良かったからな。お前は疲れていたんだろう。熟睡だった」
「言ってくれれば、交代したってばよ」
「身体揺らしてみたが起きなかったんでな。面倒くさかったし、そのまま寝かした」
「ちぇ・・・っ」

ナルトはアカデミー時代からサスケのお荷物になることをとことん嫌がった。
サスケとはずっといい仲間でいたかったし、ライバルでもありたかった。
例え、どんな些細なことでもサスケに面倒をかけることはしたくなかった。
サスケの背中を追うのは我慢ができなかったし、常に隣に並んでいたいと思うナルトだった。
一瞬でも自分がサスケに守られているなどと考えるのは小さな自分のプライドが許さなかったのである。
その思いをずっと引きずったまま今まで来ていたナルトには、今回のサスケの「寝ずの番」に対してもジェラシーのような感情を抱いてしまった。

「それよりナルト。お前昨夜変な夢見てなかったか?」
「夢・・・?う〜ん・・・・・覚えてないってば・・・なんで?」
「いや・・・別に大して深い意味は無い。ただ・・・魘されていたみたいだったからな」
「ふ〜ん・・・そっか・・・」

再び嘘。
サスケは悟られたくは無いにしろ、昨夜のナルトの不可解な行動がどうしても気になって探りを入れた。
そして再び嘘で蓋を閉める。
今のナルトにはその言葉の意味がわからなかった。
サスケが目をそらした意味も・・・。
サスケが目をやっている方向にナルトも目をやった。
視線の先は祭壇上の勾玉に向けられていた。
しかし、其処にあるべきはずの勾玉の姿が無くなっている事にナルトは気付く。

「!サ・・・サスケ!勾玉無くなってるってばよ!!」
「落ち着け、ナルト。勾玉なら此処にある」

そういってサスケは忍び袋から皮袋を取り出すと、中身をナルトに見せた。
ナルトもサスケに促されるまま、皮袋の中を覗き込む。
其処には昨日とは姿が違う勾玉が入っていた。

「サスケ良くこれ触れたな。お前!また火傷しなかったてば!?」

昨日の出来事がナルトの脳裏をかすめる。
ナルトはサスケが負った傷のことを思い出し、焦った様子でサスケの両手を調べる。

「ああ・・・目が覚めたときには光は失われていた・・・。簡単に袋に入れることができた。怪我もしていない」

サスケはナルトが自分を心配する様子を照れくさそうにかわしながら、ナルトにその両手が見えるように広げてみせる。
ナルトは、昨日の怪我以外何も無いサスケの手を見て安心した表情を見せる。

「よかったってば・・・でも、変なの」
「まぁ・・・これで勾玉も持ち出せるし、この祠がもし破壊されたとしても切り札がオレ達のところにある限り暫くの間は大丈夫だ。しかしな・・・」

話し続けるサスケの目つきが厳しくなる。

「うん・・・?」
「勾玉がオレ達の手にあることも直ぐにばれるだろう。追手はこれから増えてくるはずだ。抜かりなく行けよ。ナルト」
「分かってるってばよ。オレからしたら、この勾玉奪われるって事は死ぬのとおんなじだからよ」

ナルトは固唾を呑んで気持ちを引き締めた。

「じゃぁ、そろそろ此処をでよう」
「その前にサスケ・・・言っておきたいことがあるってば・・・」

立ち上がったサスケにナルトが視線を落としたまま呼びかける。
少し空気が張り詰めるような感じにサスケはそのままナルトの話に耳を傾ける。

「何だ・・・?」
「もしオレが・・・九尾にこの身体を乗っ取られそうになったら・・・・」
「・・・・・ああ・・・」
「その時は・・・迷わず殺してくれってば・・・・」
「・・・・・・・・・」
「オレは、多分この身体を九尾に乗っ取られれば、敵味方見境無く殺してしまうってば。それだけは絶対にしたくないってば・・・。だからさ・・・サスケ」
「もういい!」

ナルトが言葉の続きを口にしようとした時に、らしくないサスケの静止する一喝が続きを止めた。
思っても見なかったサスケの態度にナルトは少々目を丸くしてサスケの方を振り返った。
サスケの表情は相変わらず無表情だったが、苛立ちという感情だけ浮かびあがっていた。

「サスケ・・・・?」
「今は・・・封印が解けたときのことなんか話のはやめよう・・・。その時にオレ自身が判断する・・・」

静かに解き放たれるその言葉は、ナルトにではなく自分自身に言い聞かせるかのような言葉だった。
ナルトはサスケの胸中を分かってかそれ以上の言葉を綴るのはやめた。
ただ一言・・・。

「頼んだってばよ・・・」

信頼できる唯一無二のこの男に全てを託す決意を胸に刻んだのだった。

いつも死と隣り合わせの毎日を過ごしてきた。
どれだけ、自分はこの男と死線を乗り越えてきたのだろう?
越えた死線の数だけ、必然的に魂の結びつきは硬くなっていっていた。
魂の結びつきが硬くなればなるほど、湧き上がっていくる想い。
失いたくないという気持ち。
しかし、忍としての心得にある『道具になりきれ』という言葉。
仲間を思いやり、チームワークをもって・・・・。
しかし、あくまでも道具としての心得は忘れず・・・・。

生まれてくる矛盾に、一番やりきれない思いを抱いているのはサスケ自身だったのかもしれない。

二人は、勾玉と共に祠を出た。








続く



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