『汝・・・・我ニ・・・・従エ』






『生キテオッテモ・・・・・辛カロウ・・・・?』






『我ニ従エバ・・・・・心カラノ安ラギヲ・・・・・与エヨウゾ・・・・・』






〜あかし 第5章〜


「なんだってんだっ!!てめぇはぁ!!」

「やけにリアルな声にサスケは胸苦しさを覚えて飛び起きる。
生々しい声が耳に張り付いて、背筋に走る悪寒が未だ止まらない。
背中を伝う冷や汗が、うッと惜しくて気味が悪い。

「いやにリアルな夢だった・・・・これもこんなところで寝ていた所為か・・・?」

里を出て一昼夜睡眠も食事も全くとらずに走り詰めの疲れが出たのか、サスケは不思議な夢に魘された。
異様な張り付くような喉の渇きを覚えた。
サスケは近くにあった水筒に手を伸ばした。
ゴクリゴクリと喉を鳴らし飲み下していく。
全くの明かりの無い祠は飾り格子から漏れる月明かりだけが唯一のそれであった。
寝苦しさに身体がほんの少しだるい。
疲れが癒えていない証拠だった。
サスケは外の新鮮な空気が吸いたくなって、祠の戸を開けた。
今宵は満月。不吉で美しいその満月はこれから先起こる出来事を予感するかのように
青白い炎のような光をまとっていた。

「ふう・・・・」

祠の中のわだかまった空気を避け外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
不思議と外に出ると重苦しい重圧のような雰囲気から開放される気分だった。
それは身体が妖狐の恐怖に対して緊張を許していない証拠だったのかもしれない。

「情けない・・・心ではなんとも思っていないようでも身体がビシビシ妖気を感じ取ってやがる・・・」

異例の速さでの上忍昇格したサスケといえど、流石にこの環境には滅入っていた。

「良く寝てられるよな・・・ドベ・・・!」

月にやっていた視線を祠の中へ移動させた瞬間、サスケの独り言は止む。
祠の中にいる筈の、人間の姿がその寝床に無い。
不穏な空気を本能的に感じ取ったサスケは、急いで祠の中に戻る。
祠の敷居に差し掛かったとき、下界からは見えなかった暗闇の内部が見えてくる。
闇に目が慣れて行き、サスケの目に移ったものは祭壇に近づくナルトの姿だった。
その後姿はいつものような生気が感じられない。
祭壇上の勾玉は、先程よりも輝きを増し、禍々しい殺気を放っていた。
異常な事態にサスケは叫ぶ。

「何してるんだ!ナルト!!」
「・・・・・・・・」

聞こえるように何度も大声でヨロヨロと祭壇に近づくナルトの背中に呼び掛けるサスケだった。
しかし、その声はナルトには届いてはいなかった。

「チィッ!!意識が無いのか!?」

即座に、意識が無い事を悟る。
サスケはナルトに駆け寄りその肩に手をかけ自分の方に振り替えさせる。
その、ナルトの表情は・・・・
目は見開かれたものの、意識は完全に無くどこを見ているのか分からない虚ろな目をしていた。
何者かに操られているかのような・・・そんな目。
いつもの爛々と輝く生気に満ちた碧眼からは想像も付かない、死人のような目。
サスケの背中に冷たいものが伝う。
一瞬、ナルトの表情に気を取られていたサスケだったが、つい先ほど自分に起こった祭壇での出来事を思い出し
ナルトを必死に食い止めようとする。
ナルトの身体は祭壇までの歩みを止めない。
何かの力に磁石のように引き付けられて行くように、その歩みは止まらなかった。
普段修行の時組み手をしていても、ナルトに力負けする事は無かったサスケでも、
今のナルトを食い止める事はおろか、逆に自分がナルトの身体ごと引きずられていっていた。

「おい!ナルト!!しっかりしろ!!ナルト!!」

ナルトの両肩を掴み必死で意識を覚醒させようと試みるが、一向に目覚める気配は無い。
両足を床に縫いつけるように踏ん張っても止められない。

「チィッ!!」

ヒュン・・・ガッ
仕方ないと、手刀でナルトの首筋を殴打した。普通の人間であれば悶絶するような痛みが走るか
意識をなくしているはずである。
しかしナルトの意識は戻る事は無かった。しかもその顔はあくまでも無表情。痛みなど感じてはいなかったのだ。
祭壇との距離は見る見る縮んでいく。
サスケは、まるで妖狐が口を開けて待っているような錯覚に陥った。
サスケは死のカウントダウンにも似た恐怖に動揺し、脂汗を垂らした。

「ナルトォ!目ぇ覚ませぇぇぇ!!」

サスケは取り出した、くないを祭壇上にある勾玉めがけて放った。

ギィンッ

鈍い金属音を上げてくないは勾玉を弾き飛ばした。
鈍い光を放った勾玉はその衝撃を受けころころと祭壇上から転げ落ちた。
スゥっと勾玉に吸い込まれるように、光は消えていった。
ナルトの脚はその場でピタリと止まり、身体からは力が抜けきり、がくりとその場に倒れこみ再び深い眠りに付く。
サスケも一時をしのぎがくりとその場に膝をつく。

「これも、狐の所為なのか・・・?あの勾玉・・・・」

額に浮かぶ脂汗を拭いながら、祭壇から落下した勾玉を見る。
そして自分が見た先程の夢の事を思い出す。

『我ニ従エ』

その夢の言葉に舌打ちする。

「冗談じゃねぇ・・・こっちは手前なんぞに構ってる暇ねぇんだ」

妖気を放たなくなった勾玉を拾い、皮袋に二重に詰め忍び袋にしまい込む。

「此処に置いといたら、また何しでかすかわからねぇからな。手前も連れてってやるよ・・・」

意識をなくしたナルトを再び元の寝床に引きずり戻す。
その寝顔は先程の出来事とは裏腹にとても安らかだった。

「チッ・・・・・人の苦労も知らねぇで・・・・」

すやすや眠るナルトの耳にはそんな言葉は届かなかった











続く
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