激しい戦火も大粒の雨が冷まそうといわんばかりに激しく叩きつけ
炎を殴り消すように降り続いた。

完全に街としての機能をなくしてしまった木の葉の里の中を
手探りで二人は歩き回った。

まるで、世界に二人だけが取り残されたような孤独感に苛まれ
心が崩壊していくような感覚に負けそうになる。
生きる事を選んだとはいえ、それはもしかすると死ぬ事よりも辛いのかもしれない。

ナルトは急に思い出したかのよう走り出した。
「おいナルト・・・!」

引き止めるサスケの静止の声はナルトには聞こえていないようだった。





〜あかし・第2章〜

「・・・・!・・・・ここは・・・」
走るナルトを追いかけ、たどり着いてみると其処は、かつて里の英雄達と呼ばれた者達の慰霊碑の前だった。

しかし、慰霊碑とは名ばかりの今は崩れた瓦礫の山にすぎなかった。
ナルトは足元に転がっている黒い石ころを一つその手に持った。
その石ころには、磨かれた平面になっている部分があり、人工的に文字が彫られた跡がある。
ナルトが手にした石ころは、慰霊碑の欠片だった。
「里から離れたココは・・・無事なんじゃないかと思ったんだってば・・・」
「そうか・・・」

慰霊碑の欠片を握り締めるナルトの手に力がこもる。
指先が血色をなくし、白くなる。
その手につけている皮手袋に食い込んでいるのだろう、軋んだ音が静かな雨音に混じりサスケの耳にも入ってくる。

「無念だろうに・・・」
慰霊碑の下で眠るかつての英雄達は侵略される木の葉の里の一部始終を見せ付けられているはず・・・。
土の中で眠りながら何を思っただろう・・・?
自分達の命をかけて守ったものがいとも簡単に壊されるのを目の当たりにして
何を思っただろう・・・?
自分が守ったと思った者達が次々倒れていく様を見て
どう嘆いただろう・・・?
死者の無念を思えばナルトは涙せずにはいられなかった。
優しすぎるナルトのしょうがない行動なのだろう。

「サスケ・・・ぇ」
俯くナルトの背中は震えていた。
痛々しいほどに。
自分を今まで蔑み、疎ましげな目線でしか自分のことを見ていなかったのにもかかわらず、
ナルトは彼らのために涙している。

悲しいほど優しいナルトの性分にサスケは苛立ちすら覚える。

「ナルト・・・・」
「くやしかったろうに・・・痛かっただろうに・・・アイツ等に好き勝手されてよぉ」

「ナルト・・・もう・・・」
「オレ・・・くやし・・てば・・・」

「土ン中で安らかに眠って、幸せそうな里眺めてるのこいつらの幸せだったんだろ・・・・?」
「ナルト・・・っ」
「ゆっくり眠ってたのにさぁ・・・っ・・・・っ!」
「ナルト・・・っ!」
恐らく悲痛な表情で泣き顔を堪えているだろうナルトの痛々しいナルトの後姿をサスケは
見る事ができなかった。
「許せねぇ・・・てば・・・!」
「ああ・・・」
サスケは下唇を噛み締め、そう答えるのが精一杯だった。
咽び泣くナルトの傍に近づき肩に手をやる。
『もう、ここから離れよう』と諭すように・・・。

ナルトは握り締めた慰霊碑の欠片を胸の巻物入れにしまい、涙と雨に濡れた顔をゴシゴシと拭いた。
欠片をしまいこんだ巻物入れに手を当て慰霊碑が建っていた方向を向き、顔を上げる。
そして、キッと睨み付ける様に口を引き締め目線はそのままにサスケに語りかけた。
「オレは・・・もう泣かないってば」
深く息を吸い込む。喉を通る空気の音が震えてかすかに聞こえた。
「コイツ等の無念を晴らすまでは・・・もう泣かないってば!」
報復に高鳴る興奮の所為なのか、嗚咽を堪えた所為なのか、ナルトの吸い込む息の音は震えていた。
「ナルト・・・」


「オレは生きるよ・・・サスケ。んでよ・・・んで・・・コイツ等と里の皆の無念晴らすまで泥水啜たって生きてやるってば!」
「ナルト・・・」

「それがオレの生きる証だってば・・・!」
静かな後姿は少年の堅固な意思を写すかのように凛としていた。







続く



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