ヒトは悲しいかな、生きた証を残したがる生き物

ヒトは恨めしいかな、生きた足跡を残せる生き物

ヒトは流離うかな、生きる道を求める生き物

ヒトは眩しいかな、生きる喜びを知る生き物


〜あかし・・・・・・プロローグ〜


「戦いの中では、常に心は平常心を伴わなければならない」

いつか聞いたアカデミーでの授業。
そう、忍とは常に「死」と隣り合わせの生き物、道具。

心に留めておくその言葉は分かっていても実践の世界では微塵と消える。

ヒトは心を捨て切れない。
ヒトは器にはなれない。
ヒトは道具にはなりきれない。
ヒトは・・・
ヒトは・・・


大粒の雨に打たれながら、激しい戦場の最中にいたナルトとサスケは互いに背中合わせになりながら
この戦火の中を生き延びる為、周りに気を研ぎ澄ませ何時襲ってくるかもわからない敵を待っていた。

「もう、どれくらい経ったんだろうな・・・」
サスケの吐く息が白くなる。体がカタカタと寒さに耐えようと震える。

「寒いのか?サスケ?」
「いや・・・」
恐怖なのか、寒さによるものなのか、感覚が麻痺して分からない。
ナルトもまた同じだった。
全ての思考が奪われる感覚。
自分の中身が白く白く塗りつぶされていく。
怒り、悲しみ、嘆き、憎しみ様々な色の感情が沸き立っては脳裏を廻りそして無に還る。

腕から流れ落ちる血の一滴一滴の温かさだけはわかっていた。

「俺達、今どの辺にいるんだろうな・・・?」

逃れ逃れて、山をいくつも走り越えて来た。
戦場の仲間達は今どうしているのか?
考えただけでも全身の力を奪っていくだけの要因にしかならなかった。
考えたくない、思い出したくない。
「そんな事オレにはわかんねー・・・てば」

俯いたままのナルトが失笑交じりにはき捨てる。

「・・・ふ・・・だな」
サスケも自分の投げかけた質問が馬鹿馬鹿しくて失笑する。
戦火の煙が呼び水となった厚い雨雲を見上げる二人だった。
「終わったってば・・・サスケ」
「ああ・・・長かった・・・な」

二人はお互いの肩で頭を凭れ掛けさせた。














時は数ヶ月前・・・・
三代目火影が亡くなってから数年、長をなくした木の葉の里には守る城壁をなくした城ごとく
隣接する国々からの侵略が始まっていた。
「長による不安定な平和の均衡」がバランスを崩しもろくも崩れ去ろうとしていた。
隣国からの侵略はとどまるところを知らず、平和だった隠れ里、木の葉の里にも容赦なく
侵略の手は伸びてきた。
木の葉の国での、要人護衛に出ていたサスケとナルトは、突然の木の葉の里の侵略を
耳にし、急遽里の方に戻る事を命ぜられた。
しかし、戻ったサスケとナルトの目に映ったものは、悲惨な戦火に侵食されきり
変わり果てた「木の葉の隠れ里」だった。
二人はその変わり果てた「里」を見た瞬間身体から全ての力が抜けていくのが分かった。
「・・・・・あ・・・・」
思わず自分の口をついて出た声も、ナルトとサスケの耳には入っては来なかった。

里の各所から上る侵略と略奪の証の煙と炎。
燃え広がる街並み。

我が子をを抱きしめ眠るように死んでいる母親。

瓦礫から這い上がろうと力尽きた腕。

無念の表情を浮かべ目を見開いたまま横たわる、かつての忍仲間。

二人の心が悲鳴を上げていた。

たまたま自分達は要人護衛で里を離れていたが為に助かっただけ。

この場にいれば・・・おそらく自分達も
たまたま偶然で助かった自分達の命に価値など見出せなかった。
悲痛な叫びは、里にこだまするが返ってくる声は無かった

死屍累々束ねられた死体の山の傍で激しく拳を叩き付け嘆いてみる。
心があげる悲鳴のままに泣き崩れる。

生きて、この先何があるのか道を探すが、道を照らす光はさしては来なかった。


「殺してやる・・・てば・・・」
「ああ・・・・」

「俺達の還る場所を奪った奴等全て・・・殺してやる」
「ああ・・・・」

跪き、拳を地面に叩きつけたまま、低く唸る様にはき捨てられるナルトの言葉。
それに、賛同するサスケ。
二人は生きる事を選んだ。
元・木の葉の忍として・・・最後の生きた証を残す為に・・・。



続く



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