「本日の任務はこれで終了。解散ね」

草むしりの任務が終わり一同解散の挨拶でそれぞれ各自の家路につく。
サスケは無言のままきびつを返し歩いていく。サクラはそのサスケの後を追うように一緒についていく。
カカシがサスケとサクラの背中を見送り、ナルトに帰る様に促そうと言葉をかけようと其処にナルトがいるはずの
場所に視線を戻して・・・。

「ナルト帰えろ・・・・・・か?・・・・あれ?」

ナルトがいない事に気付く。

「ん〜・・・怒っちゃったのかな?」

カカシは一人寂しく家路につくこととなった。



IN THE LIFE    ナルトの巻物奪還作戦1

ナルトは任務が終わりカカシの解散の合図と共にある場所に向かって一目散に駆けだしていた。
見慣れた街並みを走りぬけ、向かった先は『人生色々』。
そこに、ナルトのお目当ての人物がいつもいる。
『あの人に頼めば何とかなるかもしれない!』
一筋の希望を抱きひたすら走るナルトだった。

角を曲がって見えた『人生色々』。
其処の暖簾を派手に弾き捲り、店の中をきょろきょろ見渡す。
店のカウンターに見えたその人物。どうやら任務後の一献を楽しんでいる最中らしい。其処に急いで駆け寄るナルト。
そして


「頼もう!」

腹の其処からの第一声。
酒を楽しんでいた人物はナルトの声の大きさに驚き、口にお猪口をつけたまま『ブハッ』と酒を噴出してしまった。

「ゲホッ!道場破りかっ!」

激しく咳き込みながら一応突っ込みを入れるのは第10班猿飛 アスマその人だった。
隣に座っているのは夕日 紅。この二人はよく此処『人生色々』に来て酒を酌み交わす飲み友達だった。

「あらぁ?ナルト君じゃない。久しぶりv」
「へへ〜紅せんせー。久しぶりだってばよ」
「折角きたんだから。此処座りなさいよvv」

紅は自分の座っている場所を立ち、ナルトに席を譲る。
ナルトも遠慮なくその場所に座った。

「へへvお邪魔しますってばvv」
「はいvどーぞ。何か飲む?ジュースとか?」
「ううん。いいてばよ」
「遠慮しちゃってvかわいいんだからぁv」

紅はお気に入りのナルトの柔らかい逆立った髪クシャクシャとを撫でて、ほっぺたをつんつん突付いた。

「相変わらず可愛いわねぇvこのツンツンの髪の毛v」
「へへ〜v紅せんせーも相変わらずキレイだってばよーv」
「きゃvありがとナルト君v」

隣の席で二人がつつき合ってじゃれ合っているのを呆れた目で見ながら、再びアスマは気を取り直し酒を飲みだした。
後姿から見れば中の良い親子3人とでも見えるのではないだろうか。不思議な組み合わせである。

「ところでナルト君、何か用事があって此処に来たんじゃないの?」

お気楽顔で紅とじゃれ合っていたナルトは、此処に来た本当の目的を思い出し、はっと我に返ってアスマの方をキッと睨んだ。
殺気だったナルトの視線にアスマが動揺したように少したじろぐ。

「な・・なんだようずまき。何かあったのか?」
「アスマせんせーからもらった巻物覚えてるってば?」
「あ・・・ああ?あの巻物か?」
「そうだってば」
「アレがどうかしたのか?」

ナルトの殺気だった視線を見ると、あの巻物の術で何かひと悶着あったのではないかとアスマが先読みし顔には出さないが少し焦る。

「術できないってば!っていうか字難しすぎて読めないってば!!!っていうか何でかわかんないけど
カカシせんせーがその巻物見て怒って没収してったってば!!!」
「ふ〜ん、カカシがなぁ・・・って、
何ぃぃ!!!カカシに没収されただとっ!?

自分の予想が杞憂だと分かり、ホッと安心するもカカシに没収されたということに更にアスマは驚いてその場に立ち上がる。
アスマが立ち上がった瞬間、その衝動で座っていた椅子が背中から後ろに『ガターン』と倒れた。
アスマの思っても見ない焦った姿にナルトは紅のほうに身を倒しビックリ眼でアスマを見上げた。
そんなナルトの表情を見た紅はムッとした表情でアスマに一喝する。

「やめなさいよ、アスマ!ナルト君、ビックリしてるじゃない!」

アスマはばつが悪そうな顔をして椅子を起こし座りなおした。
そして動揺を隠すようにタバコに火をつけ胸中に深く紫煙を送り込んだ。

「つーかなんで巻物没収したのがカカシなんだ?うずまき」

冷静さを取り戻しつつあったアスマは気を取り直して今までの経緯をナルトに聞いた。

「オレん家火事になったってばよ。そんでカカシせんせーんトコにしばらく厄介になることになったてば。
カカシせんせーと焼け残った家を見に行ったときに巻物だけ無事だったから引き上げてカカシせんせーん家で整理してたら
いきなりせんせーがその巻物見た途端に怒って没収してったってば。オレもーわけわかんないってばよ〜っ!」
「何ぃ!?火事だと!!」
「そーだってば!隣に住んでるオトナのタバコの火が原因だって消防団のおっさん言ってたってば!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

こんなことになるならいっそ火事で綺麗さっぱり燃えてしまってくれたほうがよっぽど良かったとアスマは切実に思うのだった。
そもそも、あの淫術の巻物をナルトに吹っ掛けたのは、カカシのナルトに対する気持ちを見透かしていたが所以の事だった。
あわよくば二人がそういう関係になれば面白いだろうという一種の余興みたいな悪戯心だった。
それが、何故だかナルトの家にあった巻物がカカシの懐にある。
火事とはいえ大きな計算違いの発生に頭を悩ますアスマだった。
このことをもし自分が仕組んだことがばれれば、カカシからの手痛い闇討ちは覚悟しなければならない。
誰よりもナルトを大事にしているのはカカシだからだ。その事をアスマは十二分に承知していた。
アスマは大問題発生に再び深く紫煙を吸い込み吐き出す。
そんな思惑があったことなど露ほども知らないナルトはコップの水を飲み干し『タン』とそれをカウンターに勢い良く叩き置くと思い出したかのように突拍子もないことをアスマに言い放った。

「だからサ!だからサ!!アスマせんせー!!!」
「あん?」
「巻物奪還の知恵貸してってば!!!」
「あ?ああ!?何だってオレなんだよっ!」

冗談じゃないとばかりに再びその場に立ち上がり上から威圧感を誇示するかのような勢いでナルトに突っかかっていくアスマ。
勢い良く立ち上がった所為で再びアスマが座っていた椅子は背中から『ガターン』と倒れていく。
当然、アスマはそんな椅子のことなど眼中に入ってはいなかった。
一方ナルトも、誇示されるアスマの威圧感に負けてなるものかと、
座っていた椅子の上に土足で上がり、アスマの視線とかち合わせ声を張り上げる。

「だってそうじゃんかよ!最初っからアスマせんせーがきっちり巻物の説明しといてくれればこんなことにはなんなかったってば!!
アスマせんせーにだってちょっと位セキニンってモンがあるってばよ!!」
「おまえなぁ!そうやって被害妄想になって人の所為にばっかしてっと終いにえらいめにあうぞっ!」
「えらいめってどんなめだってば!?」
「・・・っ!全く口の減らねぇガキだなぁっ!」
「そっちだってよくしゃべる熊だってばよっ!」
「プッ・・・!きゃはははははっ!熊!?アスマが熊!上手いことゆーわねぇ!ナルト君!おっかしーっ!!」

上下関係が厳しいこの忍の世界で、アスマを『熊』と呼べるのはナルトだけだろう。
ナルトの爆弾発言に紅が思わず噴出し笑い出す。
喧嘩一段落、紅の甲高い笑い声で二人は出鼻を挫かれた様に呆けた顔をする。
我に返ってみれば、店中の客と従業員の視線が自分達に降り注いでいることに気がつく。
アスマは平静を装いながら倒した椅子を起こし座りなおす。そしてナルトは立っていた椅子から降りて同様に座りなおした。

「・・・ゴホン・・・まぁ・・・うずまき其処座れ・・・」
「う・・・うん」

口喧嘩の最中にさっき火をつけたタバコは殆ど燃え尽きかけていた。
アスマは灰皿にタバコを押し付けもみ消し、新しいタバコを取り出して再び火をつけた。
ナルトは、もう一杯冷や水をもらいゴクゴクと喉を鳴らして再び一気に飲み干した。

「あのな・・・あのカカシだぞ?俺達上忍同士でもなかなかアイツからはモノ奪うことって難しい事なんだぜ?」
「分かってるってば。でもアスマせんせー、カカシせんせーと付き合い長いんだってばよ?カカシせんせーってば
相当あの巻物オレに見せたくないのか風呂にまであの巻物持っていくってばよ」
「相当だなぁ・・・そりゃあ。まぁアイツの気持ちも分からんでもないがなぁ・・・」
「何でだってば?」
「あん?そりゃこっちの話だ。ガキにゃ関係ねぇよ」

アスマはため息を隠すように胸中に深く吸い込んだ紫煙を勢い良く吐き出す。

「メンドーな事になりやがったぜ・・・」

正直巻物を渡したのはほんの悪戯心だった。
上手くナルトがその巻物の術を会得し、カカシに淫術をかける事ができれば行き着くところは目に見えている。
カカシにだって同じヴィジョンが見えているはずだ。
アスマにはカカシがナルトに対してどのような思いを抱いているか分かっていた。
分かっていたからこその今回の悪戯。
しかし、計算違いだったのは、ナルトの家が火事になったこと、しかも厄介になる家がカカシの家だったこと、そして漢字が読めない事だった。

『オレもまだまだ甘いぜ・・・・コイツが木の葉の里始まって依頼の超意外性NO.1忍者だって事すっかりわすれちまうなんてよ・・・」』

アスマは自分の滅多に無い今回の先読みの甘さを恨むのだった。

「まぁいい。オレがカカシに掛け合ってやるよ。オレが渡す巻物間違えたとでも言えばすんなり渡してくれるだろうよ」
「ホント!?」
「ああ・・・まぁ大丈夫だろう」
「ねぇねぇ・・・その巻物って一体何の術が書いてあるの?」
「ま・・うずまきのお色気の術の1000倍凄いヤツってトコかな・・・」
「そ・・それって!!もしかして淫術のこと!?アスマ?」
「ほえ?」

今度は焦った紅がガタガタと音を立てて席を立つ。その勢いで今度は紅の椅子が背中から『ガターン』と倒れる。
再び店中の視線がアスマ達に注がれる。
ナルトは良く分からない単語に小首をかしげる。
怖い顔をした紅を落ち着かせようとアスマとナルトが宥めようとする。

「ちょ・・落ち着けって紅。俺にだって考え合ってのことなんだからよ」
「??・・・そうだってばよ?紅せんせー。これはオレとアスマせんせーの問題だってば。はい、座って座って」
「でも幾らなんでも、ナルト君に教えるような術じゃないじゃないっ!」
「そうとは限らんよ?」
「どうして?」
「今にわかるよ」
「もぉ!濁さないで!アスマ!!」

二人の対照的なチャクラに圧倒されてナルトは小さくなっているしかない状態になってしまった。
なんだか早く此処からいなくなったほうがいいのかもしれないと考えるナルトだった。

「と、とにかくよろしく頼んだってばよ!アスマせんせー」
「おーよ・・・まぁ上手くいくかどうかわかんねぇけどな」

ナルトはいそいそと椅子から立ち上がり、店の出入り口の方へと走っていった。

「ちょ・・ちょっとナルト君!」
「紅せんせーまったねー♪」
「ちょ・・ちょっとぉ!!」

静止する紅の言葉を他所にナルトはさっさと店をでていってしまった。
後に残されたのは、ちびちび酒を飲むアスマと倒れた椅子の傍で固まっている紅だった。

「これで万事OKだってばよー♪」

鼻歌交じりで家に帰るナルトはこの上なくご機嫌だった。
淫術の意味も知らないままに・・・。




続く

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