敵の本拠地の真っ只中を二人は緊張したまま、しかし表情は仲のいいカップルを装いながら見渡し歩いていた。
何処から見ても、商売と観光をしに来たおのぼりさんにしか見えない。
一番怪しまれないようにするには、こういった観光客になりきって身を潜めるのが一番だ。
離れたところに、隠れ家を作ったとしても、足が着くのは早いだろう。
街に染まりきってしまえばというのがサスケの考えだった。無論ナルトも同じことを考えていた。
イチャつくカップルを装ったのも、警備の警戒心や疑心を薄くさせるためのものだった。


二人は腕を組みながら界隈の奥へと足を進めることにした。


  〜第11章〜



「取りあえず・・・宿を探さなくてはな・・・」
「ああ・・・」
「上手く潜り込んだが、あまり目立つ行動はするなよ」
「ああ・・・」
「お前は、ただでさえ目立つんだからな」
「分かってるってばよ」
「本当に分かってるのか?これは失敗できない任務なんだぞ?」
「ウッセーな分かってるってばよ!お前マジでシツコイ!」


腕を組みながらニコニコと仲のよいカップルを装いながら、宿場町へと足を進める二人だが話の内容を聞いてみると、表情とギャップの在り過ぎる内容となっていた。
ニコニコとするナルトの表情も、サスケの厭味にどんどんと引きつってきている。
サスケも負けじとナルトの気迫に、いつもの負けん気を出してしまいその表情はにこやかだがコメカミに青筋が薄らと浮き上がってきている。
周りのすれ違う人たちも、なんだか迫力のあるそのカップルに、道を開けて通り過ぎていくのだった。

目立つなといっていたサスケ本人もいつの間にか目立ってしまう羽目になっていたのだった。

「つーかさ・・・お前も俺も、もう目立ってるってば・・・」
「ウルセーな、お前の所為だろーがっ!」
「お前だってブツクサ何回も似たようなこと繰り返すからだろっ!クドイんだよ!サスケはよっ!」

あくまでも周りには聞こえないような小声で怒鳴るナルト。

「お前に失敗されちゃかなわんからな。どれだけ俺が」優秀でも足を引っ張られちゃかばいきれない時もあるんだからな」
「なんだよ!それが俺だってーのかよっ!?」
「そう聞こえたら、そうなんだろうな」
「マジお前ムカツク!!」

こういう内容の話をにこやかな表情を浮かべたまま続けているのだ。
怒りや苛立ちの表情を顔に出さずにあえて逆の表情を浮かべているのだから、本能に逆らった行動は本当に疲れるというものだ。
ナルトの右の目元の筋肉が異様な痙攣を起こし始めた。

「うお!やべぇ!なんか顔がヒクヒク痙攣してきたってばっ!」

顔の痙攣に焦ったように声をあげるナルト。

「だから目立つような事するなっていってるだろーが!このウスラトンカチ!」

それを静止させようと小声で止めるサスケ。

「ウッセーな!そもそもお前が俺のこと信用しないで、ブツブツ文句ばっか言ってんのがワリーんだろっ!?顔面神経痛にでもなったらどーしてくれんだよっ!」
「ほぅ、お前でもそんな難しい病気の名前知っていたんだなぁ」
「てめーよ?マジ俺にケンカ売ってるってば?」
「それは、お前の取り方次第だな」
「宿着いたら覚えてろってば!」
「返り討ちにしてやるさ」
「・・・・・・・ムカァ〜っっ・・・・・・」

最終的にはいつもサスケに美味しいところを持っていかれるのがいつものパターン。
口喧嘩をすれば言いくるめられ「王手」をかけられて沈降していくのがオチ。
今回もこのパターンだった。

とにかくサスケ自身も慣れない笑顔の表情を作り続けるのが限界に近くなってきていたのと、ナルトの高い体温の所為で腕を組んでいるところが汗ばんできているのが耐えられなくなってきた為、焦って一軒の宿に入った。

「いっらっしゃいませぇ〜」

この店の仲居だろうか。にこやかなお出迎えで、店の中へ迎え入れてくれる。

「あぁ、すみません。部屋空いていますか?」
「ええ、空いていますとも。さぁさぁ、どうぞどうぞ、お疲れでしょう?ウチは露天風呂もありますし、お料理も美味しいんですよ!お二人さんご案内ねーっ!」

営業スマイル大サービスで、背負っていたサスケとナルトの荷物を半ば強引に背中から引き摺り下ろし部屋の奥へと案内してくれる。
商売上手な仲居である。
二人は明るい仲居の背中を追い、奥の部屋へと入っていった。

「さぁ、こちらへどうぞ」

仲居が案内した部屋は「すずらんの間」と書かれた部屋だった。
先に仲居が部屋の引き戸を開けると、其処は小さな玄関のようになっており靴箱も置いてあった。
そして、更に奥の襖を開けると二間の部屋がひろがっており、窓から見える風景はこの店の自慢の日本庭園だった。
それにしても、この店の風格と仲居の性格が合っていないとサスケには思えたのだった。

「わぁvステキなお部屋ぁvvお庭も広くてキレイ!ね?あなたvvv」
「そうだな、この部屋でいいかい?」
「えぇvもちろんよ!vv」

ナルトは座卓に用意されていた座椅子の一つの座り、問いかけるサスケを見上げながらそう返事した。
サスケもナルトの向かい側の座椅子に腰を下ろした。
仲居は二人の中間になる座卓に正座し、お茶を入れ始めた。
そして、何気ない営業トークが始まる。

「奥さんに気に入ってもらえてよかったですよ〜」
「まぁvやだぁvv奥さんだなんてぇぇvvv仲居さんったらぁぁvvv」
「え?違うんですか?」
「ええ、正式にはまだ夫婦ではありません。こちらでの商いが終わったら国に帰って結婚式を挙げるんですよ」
「へぇぇ〜それはおめでとうございます。でもまぁ、もう結婚決まってるんだから『奥さん』でも大丈夫ですよねぇ」
「まぁ、そうですね」

何気ない営業トークにサスケも相槌を打つ。
お茶を入れ終わり、営業トークも館内の案内も全て終わると、仲居はそそくさと部屋を出て行った。
仲居の気配が完全に消えたのと同時に、どっと疲れが出たのかナルトは変化を解きだらしなく座椅子の背もたれにその身を預けた。

「ふぃ〜〜・・・・疲れたってばよ〜・・・」
「ナルト、まだ気を抜くな。誰かにその姿を見られたら終わりだぞ」
「わーってるよ。ちょっとだけ息抜きしたっていーじゃんかよ」
「お前のそういう気の緩みが、この先不安だってさっきから言ってるんだ」
「へいへい・・・」

ナルトは苦々しい顔をしながら、仲居の入れたお茶をすすった。

「とにかくナルト、此処からが本番だ。今夜始めるぞ」

真剣な表情のサスケの合図の台詞に、ナルトの表情も引き締まった。

そう・・・密偵は・・・




−今晩決行する−





続く
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